なぜマタニティ期にマインドフルネスが勧められるのか
妊娠中は食生活を考えることと同様に、ご自身の心の状態にも向き合う必要があります。
というのも、お腹の中に新しい生命が誕生し、母親の心と体は一体となってその生命を育んでいるからです。特に初めての妊娠では、出産への恐れや、きちんと母親になれるのかといった未来への不安が絶えず押し寄せてくるものです。
そうした心の揺らぎを穏やかに整え、お腹の赤ちゃんと共に「今」を大切に過ごすために、実践されているのが「マインドフルネス」という心の習慣です。
まず「マインドフルネス」とは、何か特別なことや難しいことではありません。簡単に言えば、「今、この瞬間の自分自身の状態に、評価や判断をせず、優しく注意を向ける」心のあり方のことです。
私たちの意識は、過去の後悔や未来の不安など、常に「今ここ」にない事柄に向かいがちです。特に妊娠中は、意識がどうしても未来の出産や育児に向かい、心配事を増やしてしまう傾向があります。
マインドフルネスを習慣にすると、そうした心のさまよいに気づき、意識を穏やかに「今」へと戻す練習ができます。これにより、過剰な不安を手放し、心の負担を軽くすることが期待できるのです。
また、出産の痛みを「コントロールできない恐怖」として捉えるのではなく、「赤ちゃんに会うための体の自然な感覚」として受け入れる訓練にも繋がります。これは、お産を乗り越えるための大きな力となるでしょう。
今日からできるマインドフルネスの実践法
マインドフルネスは、頑張って行うものではありません。1日3分からでも十分です。大切なのは、ご自身が心地よいと感じるペースで続けることです。
基本となる「3分間呼吸法」
まず、あぐらや椅子に座るなど、ご自身が楽だと感じる姿勢をとります。そして優しく目を閉じ、ただ自分の呼吸に意識を集中させましょう。
「吸う息でお腹が膨らみ、吐く息でへこんでいく」その体の自然な感覚を、ただ観察します。途中で考え事が浮かんできても、それを否定する必要はありません。「あ、今、別のことを考えていたな」と優しく気づき、またそっと呼吸に意識を戻すことが肝心です。これを繰り返すことで、心が静まっていくのが感じられるでしょう。
赤ちゃんとの繋がりを深める「ボディスキャン」
リラックスできる姿勢で横になり、意識を自分の体に向けていきます。足先、ふくらはぎ、お腹、胸、腕、そして顔へと、順番に意識を移動させ、それぞれの部位の感覚を観察します。
特にお腹に意識を向けた時には、「温かいな」「張っているな」と感じるままを受け入れます。もし胎動があれば、その神秘的な感覚に全ての注意を集中させてみましょう。お腹の赤ちゃんと心を通わせる、かけがえのない時間となります。
日常でできる「食べる瞑想」
毎回の食事で、最初の一口だけでも試してみましょう。目の前の食べ物をじっくりと見て、香りを楽しみ、口に含んでから、その食感や味の変化を丁寧に味わいます。
「この栄養が、お腹の赤ちゃんにも届いていくんだな」と感じながら食べることで、つい流れ作業になりがちな食事が、感謝と喜びに満ちた豊かな時間へと変わっていくはずです。
マインドフルネスは妊娠中の不安定な心を支え、穏やかなマタニティライフを送るための有効な手段となり得ます。この心の習慣は、産後の育児で忙しい時期のセルフケアにも必ず役立ちますので、ご自身のペースで、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。